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Journal #30

日常にとけ込むティッシュボックス
DUENDE「STAND!」

2016.03 Photography, Text: 加藤 孝司

手を拭く、鼻をかむ、テーブルやデスクの上のちょっとした汚れを拭く。日常の道具としてのティッシュペーパー。薄く、軽く、触り心地が柔らかく繊細でありながら、程よい丈夫さも兼ね備えている。あらゆる日常のシーンで活躍してくれるもの。使い終わったら、丸めてポイとゴミ箱に捨て、しかも目立たずかさばらない。特に春先、花粉の季節に鼻がぐずぐずする人には、箱ごと持ち歩きたくなるほど、重宝するもの。もしこの世からティッシュペーパーが消えてしまったら、日常のいくつかのシーンは間違いなく不便になるに違いない。

みなさんのご家庭ではどのような場所にティッシュボックスを置いているだろうか?テーブル、サイドボード、デスクトップ、こたつの上。いつでも手を伸ばせば届く場所にティッシュボックスが置かれているのではないだろうか。
家で使う市販のティッシュボックスは、横長の紙の箱にパッケージされ、ドラッグストアやスーパーマーケット、コンビニなどで山積みされ販売されている定番商品だ。
昔はティッシュの箱といえば、花柄やパステルカラーのイラスト、商品名が入ったものが一般的だった。近頃では、装飾や文字も排除したシンプルなパッケージも増えてきた。そして、ティッシュボックスカバーもインテリア性を考えた市販のもの、お手製のものなど個性的なものが揃う。

ティッシュボックス自体も薄型、または大容量、そして、上質な紙を使用したセレブなティッシュ、抗菌効果をもつものまで、ティッシュペーパーひとつとってもさまざまなバリエーションを手に入れることが可能になった。

今回ピックアップするDUENDEの『STAND!』は、プロダクトデザイナーの金山元太氏がデザインした、省スペースに置くことのできる自立型ティッシュボックス。2004年の販売開始以来、現在まで80万個以上を販売している人気商品である。
日頃目にする機会の多いティッシュボックスを「立てる」という、シンプルだが、イノベーティブな発想が究極のミニマムなデザインとして実現した。これは直方体がもつ立ち姿の美しさと、横置きでスペースをとっていたものが立ち上がることの省スペース化という、美しさと実用性の二つがリンクして生まれたものだという。

ティッシュペーパーはその機能性の高さゆえ、生活になくてはならないものでありながら、インテリアとしては邪魔者として扱われてきた。それは、インテリア雑誌やテレビドラマのシーンにおいて、そもそも存在しないものとして扱われていることからも分かるだろう。
実際、ティッシュボックスは置いたときに安定感のある横長の形状から、リビング、ワークスペース、キッチンや洗面台の上など、ただでさえ手狭な日本の住空間において場所をとるものでもあった。

だからと言って日常使うティッシュペーパーだから、しまい込んでいては意味がない。その点STAND!は、幅をとらずシンプルなデザインで、ちょっとしたスペースに置けるのがいい。
本棚の中の本と本のあいだ、花瓶の横、PCの隣、煩雑になりがちなキッチンカウンターや、洗面台の上に置いても思いのほか邪魔にならない。
今でこそ縦型のティッシュボックスは少なくないが、STAND!はその最初のもの。色はABS樹脂タイプが6色、ウッド2色、スチール2色とラインナップ。シンプルな白からピンクやパープルまでカラフルなものも揃い、置く場所や気分に合わせて選ぶ楽しみがある。

立てたときにちょうど真ん中あたりから、下に向かって広がっていく安定感のあるフォルム。直線とフラットな面だけで構成された形。何より普段見慣れたティッシュボックスが立ち上がったような、奇をてらったところのないデザインも好感がもてる。小さなモダニズム建築のようなさりげない佇まいもいい。また、映画『2001年宇宙の旅』に登場する直方体のオブジェ、モノリスのように見えなくもない。それは日本人には馴染みの深い、折り紙でつくった造形のようにも見える。
そんな遊び心にあふれたSTAND!は、狭いスペースを楽しく豊かに暮らす現代人の生活の知恵、遊び心から生まれた日用の道具である。

もちろん使い勝手も申し分ない。無造作に引っ張り出して使うことの多いティッシュだが、STAND!なら底にストッパーが付いているので片手でティッシュを引っ張っても倒れる心配がない。

ティッシュペーパーは20世紀初頭にアメリカで生まれたもの。コットンの代替品として開発されたというが、のちにハンカチの代わりに普段使いされるようになった。その頃、現在のポップアップ式のティッシュボックスが登場する。柔らかさと強度の面から2枚一組で製造され、当初は100組200枚、その後200組400枚のボックス入りが一般化した。1個単位の販売から5箱パック、スリム化、高級化などの品質改良や差別化を経て現在に至る。かつてはティッシュボックスの底のほうに一枚だけ色付きのティッシュが入っていたりしたこともあった。
日本には戦後になってアメリカ文化の流入とともに輸入され、1960年代には国内でも生産が開始、1964年には早くも国産の箱入りティッシュの第一号が登場した。アメリカで生まれたティッシュだが、現在では国内のティッシュの消費量はアメリカの3倍にまで膨れ上がっている。

日本では、紙を使った「ぬぐう」や「ふく」文化は、古代より、塵紙、落とし紙、鼻紙、懐紙、畳紙、化粧紙として一般的に用いられてきた。江戸期には、僕の故郷でもある浅草で浅草紙なるものが製造され、長野上田の上田紙とともに日常使いの鼻紙として広く庶民に使われていたという。

STAND!は使い方もいたってシンプル。ボックスに付属する透明のインナーケースに、市販のティッシュボックスからペーパーの束を取り出し差し替えるだけ。量販店でたまに目にする詰め替え用のティッシュペーパーを使えば、廃棄するゴミも減らすことができるエコな存在である。

縦型のケースからティッシュが一枚、しゅっと出ている姿には、生きもののようなどこか愛嬌さえも感じる。STAND!は当たり前な日常の中でモノとしての確かな存在感を放ちながら、日々の暮らしに寄り添い静かに空間に佇んでいる。

STAND! STEEL

¥3,800 + 税

STAND! WOOD

¥5,000 + 税

STAND! ABS

¥2,200 + 税

2016.03 Journal #30
「日常にとけ込むティッシュボックス DUENDE「STAND!」

Photography, Text:

加藤 孝司

ジャーナリスト

http://form-design.jugem.jp/

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