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Journal #12

2014.07 Interview & Text: 加藤 孝司

家具、雑貨、アクセサリー、ステーショナリー、キッチンウェアなど、幅広いラインナップで、ライフスタイルを提案しているマークスインターナショナル。そこで取り扱われるアイテムをセレクトし、オリジナルの商品開発をしているのがマークスインターナショナルのディレクター兼バイヤーである西場弘治さんである。西場さんは好奇心旺盛なフットワークの軽さを活かし、世界中を飛び回りながら、現在のライフスタイルに見合った生活を豊かにする、楽しいアイテムを日夜探しまわっている。そんな西場さんの目で選ばれ、企画されたものが、インテリアショップや雑貨店の店頭に並ぶとき、人びとのワクワク感や楽しさをひきだしている。その源泉についてお話をうかがった。

人びとの共感を生み出すハッピーになれるものを

── 西場さんのマークスインターナショナルでのお仕事を教えてください

わたしは商品開発全般の仕事をしています。開発したい商品の企画をデザイナーに依頼してかたちにしたり、海外の展示会での出展企業や、現地のショップで見つけた商品の製造元やデザイナーとコンタクトを取り、輸入に向けて直接商談をすることなどです。また同時にそこで見つけてきたものをどのように国内で販売していくかも考え、展示会の会場構成やディスプレイも含めプランニングをおこなっています。

── いつごろからいまのお仕事をされているのですか?

マークスインターナショナル以前は5年程商社に勤め小売店鋪、卸し事業部の立ち上げに関わり、店舗のMD, VMDから企画、バイイング、営業まで幅広い仕事をさせていただきました。
このころ店舗のディスプレイも独学で覚え、毎晩のように棚変えをしていた記憶があります。商品が一番キレイにみえる展示方法やお客さまに興味をもっていただける陳列、POP作りのことでいつも頭がいっぱいでした。でもこのときの経験がいまに生かされていると思っています。
また店舗のバイヤーと営業の両方を経験できたので、両者の気持ちが理解できるのは自身の強みといえるかもしれませんね。

── ライフスタイルを提案するバラエティ豊かなアイテムたちは、どのようにセレクトや企画をされているのでしょうか

そもそものお話をしますと、マークスインターナショナルでのバイイングの仕事は、いまでも主力商品のひとつであるドイツ製キャニスターWECKの瓶に入ったキャンドルから始まりました。それに関連付けながら展開する商品のラインナップを考えていく、ということをしていまに至っています。ですので、すべての商品には何らかのつながりがあるのです。
それと当初からバイイングと卸しをしてということにくわえ、デザイナーさんと組んで新しい商品を開発し、マークスインターナショナルとして海外にその商品を売っていきたいという思いがありました。
そこには、インテリアを通じてライフスタイルを提案するマークスの企業としての商品構成を確立するとともに、当然ながらわたし自身のバイヤーや企画の立場として、マークスインターナショナルのビジネスをいかに成功させるかということが前提にあります。
一番大切にしているのは、国内外をふくめ、時代の流れを体感しながら、本当によいと思い、自信をもってお客様に紹介できるものは何か?と考えながら商品構成をしています。
自分が出合って、いいなとワクワクした物を、たくさんの人に紹介したいと思っているんです。

▲ ドイツ南部ニュルンベルクのcafeにて

▲ WECKを使用したパリで話題のBio cafe ‘BOCO’にて

▲ パリのセレクトショップ‘MERCI’にて

── 西場さんが物を選ぶときの基準のようなものはありますか?

商品の話とはそれますが、お祭りや音楽の野外フェス、あるいはサッカーの国際試合の後などに渋谷の街で皆が盛り上がっている光景を目にすることがあると思います。わたしは、ああいった日常からすこしだけ逸脱してるかもしれませんが、非日常をみさせてくれるものを人びとはいつの時代も求めているのかな、と思っています。
ですので、商品のセレクトにしても実用性だけでなく、日々の生活がより楽しく、前向きな気持ちになるきっかけを与えてくれるものであったり、ピースな感覚につながるものをと考えています。
むかしからキャンドルが大好きで、個人的に部屋やアウトドアで使ったりしていました。小さなことかもしれないのですが、それを楽しむことで、日常の悩みや疲れが少しでも軽減されるのであれば、その商品には価値があると思うんです。
マークスインターナショナルで扱う商品は多岐にわたっているかもしれませんが、根本のところには実はそんな思いや考えがあります。
また、それがマスプロダクションの強みだとも思っています。マークスインターナショナルの商品を通じて、すこしでも素敵な生活スタイルを創造するお手伝いができれば嬉しいですね。

ワクワクした思いを伝える

── これだけ世の中に多くの物があふれていると、そこでの評価軸はどれだけの数が売れたかや、メディアの評判などで数値化するしかない部分もあると思います。人をハッピーに、幸せにするということは、それとは真逆にあることなのかもしれませんが、物の価値をはかるうえでは本質的なことかもしれませんね。

それに通じるかわかりませんが、商品を手にとってもらうためには、まずお店のディスプレイなど、商品のみせ方が大切だと思っています。昔から部屋の模様替えや、ガーデニングなどが大好きで、祖母に女の子みたいねと言われていました(笑)。
もちろん売上げも大切なのですが、人がお店に足を踏み入れるということは何かしら興味をもって、いいな、と思ったから足を一歩踏み入れてくれると思うんです。さきほどのお話のようにビジネス的な数値で物の価値をはかる人も多いと思いますが、なんかいいな、という共感を生み出すシステムをどのようにつくるかも大切にしたいと思っています。
直感的に共感できる商品やお店のディスプレイに出合ったときに、人は無条件にワクワクしたりハッピーになると思うんです。それは子どもにかえっている瞬間ともいえるでしょう。わたしもその感覚で物選びをしていますので、展示会で新しい商品と出合ったときのワクワクした気持ちを、小売店のバイヤーさん、そしてエンドユーザーにどうやったらうまく伝えられるか、商品を見つけたあとにはいつも考えます。
そのためには商品をただ紹介するだけでなく、実際に使われるイメージ作りをきちんとかたちにする必要があります。ですので、展示会ではなるべくその商品のよさが一番伝わるようなディスプレイができるよう試行錯誤しています。でもそれを考え、ディスプレイしている時間が実は一番楽しい仕事でもあります。

▲ DUENDE「WALL RACK」(右)、「WALL HANGER」(左)

── そのなかでも、STAND!やWALL RACKはキーになったアイテムだと思いますが、こちらの2点について教えてください。

WALL RACKが2003年だったのですが、ウチのラインナップに雑貨しかなかったころ、真喜志さんというデザイナーさんと出合いました。その頃は裏原ブームでスニーカーが流行っていましたので、スマートにスニーカーを収納できるラックをつくりたいなとなんとなく考えていました。そのイメージとして以前海外のメーカーでみた立て掛ける家具なんかいいいなあと思っていたのですが、真喜志さんにみせていただいたポートフォリオの中に、その家具の写真があったのです。なんとそのデザインをされたのが真喜志さんだったのです。その場で日本仕様にモディファイして一緒にやりませんかと提案しました。そういった意味ではとてもタイミングがよかったんです。
棚とあわせてたくさんの洋服が収納できるハンガータイプの収納家具のデザインも依頼しこうしWALL RACK」とWALL HANGERが誕生しました。
一人暮らしであれば大きな家具などを買わずに、この2つだけでことが足りてしまう便利な家具です。シンプルさや価格帯、タイミングがぴったり合って、いまでも売れ続けているヒット定番商品になりました。
DUENDEのヒット商品「STAND!」に関してはデザイナーの金山さんが、2004年のデザイナーズブロックという展示会に出展していた際に出合ったプロダクトです。そのときはメインで展示されていた作品の片隅にひっそり、STAND!のプロトタイプが床に置いてありました。「ティッシュボックスを立てる」というものすごくシンプルな発想と、究極のミニマムなデザインに感動しました。なんとかオリジナルブランドDUENDEで商品化させて頂けるようお願いした結果、商品化となりました。

── メーカーとして生産はどのようにされていたのですか?

とはいっても、そのころぼくらはものづくりの体勢がいまほど整っておらず、アイデアはあっても、それを生産することは簡単なことではありませんでした。いろいろな工場さんにご相談したりしたのですが、満足のいく製品をなかなかつくることができずに、プロダクトとの出合いから、製品化まで結構な時間がかかりました。最終的に生産をサポートしていただける方に出合い、満足できるクオリティのものをつくることができました。
STAND!は、当時はいまよりティッシュボックスの競合もありませんでしたし、もちろん売れるという自信はあったのですが、予想以上の人気商品になりました。2004年の販売開始以来、これまで70万個を販売してきていて、いまでも定番商品でありつづけています。

日本の暮らしにみあったものを提案

── 海外や国内で参考にしている企業やブランドはありますか?

正直これというブランドなどはないのですが、そのことでひとついえるのは、人は生まれ育った環境に影響されるということです。無印良品が生まれてきたのも日本人の生活環境が背景にあってのことだと思います。海外に暮らしたこともあるのですが、そこで多くのグッドデザインに出合いました。ですが、そのまま日本にもってきてもしっくりこないことが多々ありました。どうしても現実の暮らしとギャップがでてきてしまうんです。気候、生活習慣、色使い、住空間などなど、いろんなことがその理由と思います。
ですので、当事者である自分や友人のライフスタイルや生活環境が、物を選んだり作ったりするときの物差しになっている部分はありますね。

── それが日本人であるぼくらのリアリティにつながっているのかもしれませね

まさにそうですね。例えばドイツの雑貨や家具には、壁にドリルで穴をあけて固定するものも多いのですが、日本の住宅事情でもそれはリアリティがありませんよね。ですが、ドイツ人に日本では壁に穴をあけることがなぜダメなのか、それを説明すること自体が難しいんです。そうするとそもそものゴールにたどり着くことも困難です。ヨーロッパが面白いのは、あれだけ国同士が近いのに、なぜこれだけ違うのかということです。
ですが、日本人のいいところは、よいといわれているものに関しては、なぜそれがよいのかを考えて、それが自分の暮らしにあえば、うまく暮らしにとりこんでみよう、という柔軟な姿勢ができるところだと思っています。

── キャンドルからはじまって、雑貨や家具、キッチンウェアや身の回りの、ライフスタイルを豊かにハッピーにする製品を西場さんは手がけられてきましたが、いま注目しているものはありますか?

オーガニックなスタイルで、昔ながらの雰囲気をもったものでしょうか。
クリエイターが数多く集まる北ロンドンのマーケットの一部では、数年程前から90年代を彷彿とさせるような雰囲気が蘇り、オーガニック食材、手作りだけど洒落たベビ−服、荒物的な日用品のストールが立ちならび、ロンドンっ子のあいだでもちょっとした話題になっています。
東京でも勝どきや青山などで、オーガニックマーケットが定期的に開催されていますが、こういったスタイルができあがっていくことに興味があります。それによって自然とものに対するニーズも変わっていくでしょうし、よりリアルにそのもの本来の価値を見出す人が増え、その結果、それがたんなるブームではなく、人びとの生活に定着していくのではないでしょうか。

西場 弘治

(株)マークスインターナショナル ディレクター兼バイヤー
(株)ei代表取締役

2014.07 Journal #12

「ディレクター・バイヤーというポジションから振り返える、marcsの10年間」

Interview & Text:

加藤 孝司

ジャーナリスト

http://form-design.jugem.jp/

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