1. TOP>
  2. Journal>
  3. #04 ヒットを生み続けるDuendeのプログレス

Journal

01

Journal #04

004_48

2014.01 Text:堀 紋子

Duendeのアイコン的商品〈WALLシリーズ〉と〈STAND!〉をご存知だろうか。
スチールパイプを使ったシンプルなオープンラックと折り紙で形作ったようなティッシュケースのことである。
街のライフスタイルショップや雑誌のスタイリングの中で目にしたことがある人も多いはずだ。
これらの商品によってDuendeというブランドは一躍有名になった。
Duendeの商品はシンプルでミニマル、デザイン性があり、
サイズ感、価格面において整合性が取れた優れた商品が本当に多い。
ではなぜヒットを生み続ける事ができるのだろう。
その謎を解き明かすべく、設立当初にさかのぼってDuendeの軌跡をたどる事にしよう。

▲ 左:〈WALLシリーズ〉のウォールハンガー(左)とウォールラック(右)
右:縦置きティッシュケースの先がけ〈STAND!〉

マスプロダクトの持つ可能性を信じて

Duendeは2001年に誕生した。ちょうどインテリア業界が勢いを増し、日本市場は世界から見ても魅力的だった頃のことだ。最初の商品はスツール〈コマンドシット〉だった。これは誰もが一目でパソコンのキーを象っていると分かる。
このように当初Duendeは、世界中の人々が共通認識を持ち、国の隔たりなく日々の暮らしに使えるものを提案していくという発想を軸とした。旅を通じて自身の人生を歩んで来たディレクターの西場氏は、マスプロダクトの持つ可能性にかけ、日本から世界へ商品を発信することを目標に掲げたのだった。
当時コマンドシットのデザイナーで米国出身のロス・ミクブライド氏がブランド立ち上げに関わっていた事と、西場氏の海外進出の夢が重なり大きなチャレンジに踏み切ったのだった。しかしその想いはすぐに原点へ戻されることとなってしまう。日本と海外との居住空間の違い、そして物流面など数々の大きな壁にぶちあたってしまったのだ。

突然の出会いが突破口に

ちょうどこの頃、沖縄の取引先の紹介で、ある女性デザイナーがポートフォリオを持参して突然展示会のブースに現れたという。それが後にDuendeの大ヒットシリーズ〈WALL〉を生み出すことになる真喜志奈美氏だった。「これを見たとき、あ、何か出来るかもと感じました。」そう言って代表の大谷氏は懐かしそうに、当時から大切にしているというポートフォリオを見せてくれた。それはA4サイズのプリント紙を束ねただけの手作り感たっぷりの作品集だった。
試作はすぐに始まり、デザインスケッチに合わせて、すっきりとした線の細いオープンラックが完成した。しかし出来上がってきたものはラックとしては収納力も少なく、強度にも問題があった。たった2本の支柱となるパイプに棚板を組み合わせているだけのものなので、固定の方法など試作品は構造的にも無理があったのだ。

▲ 真喜志氏が持参したポートフォリオ

しかし、このことがきっかけで、その後Duendeの商品開発を担当することになるメタルワークスの酒井氏がプロジェクトに参加することになった。真喜志氏は、デザインコンセプトはそのままに、フレームを少し太くし、より奥行きを持たせるなどのリデザインを行った。もちろん使い勝手を充分考慮し、壁に置いた時の見た目のバランスにも配慮しながらである。

また商品化に際し構造的な問題の解決にも挑んだ。パッケージサイズが大きくならないように上下分割式にし、横揺れ防止のために各パーツどうしの取り付け方法を検討、印籠ジョイントも採用した。試作は半年ほどかかり、何度も試行錯誤が繰り返されたと言う。そうして頑丈なスチールパイプと巧みな加工技術の融合により、壁面に立てかけるだけで使えるオープンラック〈WALLシリーズ〉はついに完成した。突然の出会いから1年以上が経過していた。

〈WALLシリーズ〉はまるで宙に浮いているような軽やかさがとても印象的だ。圧迫感がなく、自然にその空間にすっと馴染むような雰囲気である。強度のあるスチールパイプだから本を何冊置いても棚はしならないし、重たい物を載せれば載せるだけ安定感は増す。意外かもしれないが収納力だって十分ある。風が通り抜けるような下駄箱、いつでも引っ越しできるような家具というのがコンセプトなのだそうだ。無駄のないミニマルな美しさの極みである。

さらなる飛躍

時は移り2004年、東京の台場で開催されたTOKYO DESINERS WEEK コンテナ展でのこと。展示ブースの片隅にぽつんと置かれていたティッシュケースが西場氏の目に飛び込んだ。「これを見たときは興奮しました。すぐに帰ってとにかく会場に行って見てきてほしいとみんなに言いましたから。」と西場氏は当時を振り返る。
これまでの概念を覆す、縦置きタイプのスチール製ティッシュケースで、デザイナー金山元太氏の〈STAND!〉という作品だった。思わず息を呑むようなすっとした美しい佇まい。紙を引き出しても倒れないように考慮された妙々たるバランス。〈STAND!〉を持ち上げたときも、中の箱が落ちない仕組みになっている。狭小スペースにも高い位置に置いても使いやすい。このように機能と美しさを兼ね備えた「他にないデザイン」はDuendeのコンセプトにぴったりだったのだ。

▲ 〈STAND!〉の裏側。持ち上げたときも、中の箱が落ちない仕組み

しかし金山氏のプロトタイプは高度な技術を要した手作業の部分がとても多く、量産不可能な上、製法を変えることも出来なかった。そこで酒井氏は工場を回り、〈STAND!〉に見合った製造コスト実現のため協議・試作を繰り返し、溶接の仕方や塗装方法など一つひとつの難題に立ち向かいながら、ようやく製品化されたのである。〈STAND!〉のシンプルなその形とデザインは計算し尽くされた究極の形なのだ。
手作業でしか作れなかったプロトタイプは、ついにDuendeの商品としてデビューし、今まで無かった縦置きのティッシュケースの第一号となって世の中に広く認められた。片隅に置かれていた小さな原石は、後にDuendeのアイコン商品となり、2006年にはグッドデザイン賞を受賞した。

その後、今度は加工がしやすく、耐熱性に優れたABS樹脂製の〈STAND!〉が発表された。素材の違いと色のバリエーションが増えたことで、使う場所や空間の雰囲気に合わせて使い分けることも可能だ。
ティッシュケースのマーケットは当時それほど大きくはなかったが、〈STAND!〉がその市場を拡大したと言っても過言ではないだろう。そしてティッシュは横置きという概念はなくなり、数々の縦置きケースが当たり前のように世に出回るようになった。

▲ STAND! ABS

Duendeの新しい可能性と方向性

これまでDuendeは建築の構造材としても使用されるスチール材を使った製品を主に創り続けていた。それは薄くても強度があり、直角に折り曲げたり、アールに曲げるなど加工がしやすい素材であり、シンプルさの中にも機能性を持たせやすいという理由からだ。
しかし2011年の東日本大震災以降、Duendeでは時代の繊細な変化に合わせ、より人に優しい感覚を与えるプロダクトの開発に取り組んでいる。その第一弾がサイドテーブルの〈TRE〉だ。建築家の芦沢啓治氏によるデザインで、スチールのクールな感じと木の温もりが相まってどんな空間にも合う。天板が薄いスチールプレートにより軽い見た目に仕上げられているのも良い。3本脚のジョイント部分は角パイプを用いることでスマートな雰囲気とオーガニックな木の風合いの調和がとても美しい。〈TRE〉によりDuendeはスチールと木材を組み合わせた新しい世界を切り開いたのである。

▲ TRE

Duendeが考える「いいモノ」

通常ものを創る行程は、まずアイテムを決め、デザインを考えて、コストと照合させながら様々な箇所を修正し製品を完成させる。しかしこのプロセスでは、最初に描かれたデザインがどんどん崩れてしまう。このようにデザイナーの思想とは別で、変更を余儀なくされたモノは、少し違和感がある。逆にデザインがいいと思うモノは、オリジナルのデザインにこだわっている製品なのだろう。
Duendeの場合はデザイナーの「完成したデザイン」ありきで開発が進んでいくので、そのフォルムに一切妥協がない。人の目には見えない箇所に細工をしてみたり、使いやすさに重きを置いてサイズ感や素材を変更したり、形はそのままに全体の構造を変えるなどして一つひとつの問題を徹底的に解決していくのである。それは使いやすさや、デザイン性、日本の住宅環境に合ったサイズ感、価格に至るまでの全体的なバランスが取れているという事である。発売から10年近く経過しているのにデザイン変更はおろか、仕様変更もしていない商品が多いのはこのような徹底した開発への取り組みがあり、それゆえ多くのユーザーに今もなお認められているからなのかもしれない。 だから世に送り出した商品は今でも着実に市場に根付き、この競争が激しい世界で確固たるポジションを築くことができているのだ。
2011年Duendeは〈STAND!〉をきっかけに、オーストラリア上陸を果たした。ブランド設立から10年目のことである。Duendeの魅力=「バランスのいいモノ」の具現化は世界共通なのである。私たちのまわりにありそうで無かった「いいモノ」を発信しながらDuendeはこれからも続いていくのだ。

2014.01 Journal #04「ヒットを生み続けるDuendeのプログレス」

Text:

堀 紋子

北欧ジャーナリスト&コーディネーター

Journal