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Journal #01

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2013.12 Photography & Text: 加藤 孝司

2004年にDUENDEから発表された壁に立て掛ける家具「WALL RACK」。
物を置くことで安定し、自立するその家具は、
身近にある道具を楽しみながら使うことを誘発する生活のためのツールでもある。
そんなWALL RACKは、それをデザインした真喜志さんが、
旅人のような自由なスタイルで生活をしてきたなかで生まれてきた、
現在のノマド的な生活や働き方を先取りしたような、使い方を限定しない家具である。
隅田川のほとりにたつマンションの一室、真喜志さんがデザインするものに通じるような、
ミニマルで、見晴らしと風通しのよいアトリエでお話をうかがった。

使い方を選ばない自由さ

── 「WALL RACK」はどのようにして誕生した家具でしょうか

2000年の春にミラノサローネに出展したのですが、サローネに出品することを前提にプロトタイプをつくりためていた時期がありました。わたしは初めてのデザイン事務所をソウルで立ち上げたのですが、ソウルの小さな町工場でいく度も試作を重ねながらうまれた作品です。

── どのようなユーザーをイメージしてデザインされましたか?

基本的には自分や当時の友人たちをイメージしていました。

── 置く場所を固定しないというアイデアは、どのようなインスピレーションから生まれたのでしょうか?

私が生まれたのは沖縄なのですが、東京で大学生活を送り、その後ドイツ留学を経て、ソウルで仕事を始めました。それぞれの土地は私にとって仮住まいであり、一種旅人的な生活を続けてきましたので、部屋に大きな家具を置くような暮らし方をしていなかったんです。
家具がない生活をするなかで、部屋では身の回り品を床に直接置いていました。ですが床にそのまま置いておくと、どうしても洋服や道具のうえにホコリやゴミがたまるんですね(笑)。そんな移動する生活を送るなかで、それでも必要な家具って何か?と考えていました。
いつも自由で身軽な生活をしたいと思っていましたので、部屋の中に大きな家具は置きたくなかったんです。階段や手すり、電車の荷台にパッとモノを置いたり、かけたりできるような…WALL RACKはかつて自分が求めていたそんなライフスタイルから生まれたプロダクトでした。

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▲ DUENDE「WALL RACK」
Photography: Teruaki Kawakami / bean

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住環境や暮らし方にフィット

── どこでも使うことができるフレキシブルな家具、というイメージを想像していたのですが、決してそれだけではなかったのですね。立て掛ける家具を実現する上で苦労した点を教えてください

重心を床に集中させ、物を置くことによって安定するように脚の角度を何度も検証しました。
特に日本はどこに住んでいても地震が多い国ですから、最初はどうかという声もありました。壁に立て掛かっているわけですが、その斜めに立て掛かっているところに重心がきて、さらにその上に物を置くことで安定するというように、立て掛ける角度をふくめ設計しています。もちろんビスで壁に固定できるようにしているのですが、棚板の奥行きも一番下が広く、上は浅くして倒れづらい形状にしています。そのような安定性を確保した上で、しかもインテリアとして形が美しくなければなりません。不思議なことに、いろいろ試作をスタディしていくなかで、これだ、という安定する形状になったときに、形自体も一番美しく収まったんですね。重力にしたがった形状にするとおのずと形も美しくなる、それは発見でした。

── 使い方の自由さや見せる収納ということもふくめて、「自分仕様」に使うことのできる家具だと思いました。物を部屋の中で見せてもなお美しい、WALL RACKのデザイン上の工夫を教えてください

風や空気が抜ける感覚があるかと思います。パイプのみで出来ていますし、棚板もほとんどありませんので、ホコリがたまるということもありません。色もモノトーンにすることで、極端にその存在を消しています。
そもそも当時あまり物を持たない生活をしていましたので、いわゆる見せる収納ということは考えていませんでした。いくつかの棚と洋服を掛けることのできるハンガーがあれば十分だったんです。
ですが、必要最低限の、物が少ない生活をしていると、不思議なもので、ときどきレイアウトを考えたり、自分で使いやすいように組み替えたりしたくなるんですね。そんなときに便利な家具だと思います。

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部屋を整えることは、頭の中を整理すること

── 販売から10年ほど経ち、あらためてWALL RACKはどのような家具だと思いますか

ちょうどあの時代は世界的な新しいデザインの動きとして、オランダのドローグデザインが世界中に広まっていったタイミングで、家具の概念が自由になっていった時期でした。当時は意識していませんでしたが、今から思えば、その時代に多少影響を受けていた部分もあるかもしれません。
わたしの個人的な思いもそうですが、日本の住環境や、若者のライフスタイルにおける感覚にも偶然フィットしたのかなとも思います。いまから13年も前にデザインした家具です。あのころのわたしは自由だったと、つくづく思います(笑)。

── 現実の暮らし方という、物の背景のほうが変化していく、それが面白いですよね。そういった意味では、シェアハウスやカーシェアリング、働き方にしてもノマドなどが一般的になりつつあるいまの暮らしにこそ見合った家具なのかもしれません。
WALL RACKは生活の中に溶け込む日用品としてのデザインだと思いますが、同時にアートのような彫刻的な要素もあわせ持っていると思います。アートとは違うデイリーユースの家具の魅力や意義を教えてください

ソウルでデザイン事務所を開くまえに暮らしていたドイツでは、彫刻を学び、創作活動をしていました。ベルリンで何度か展示会をしたときに、あなたが作るものは家具的である、と言われたことがありました。それは私が建築や家具から強い影響を受けていたからなのかもしれません。
アートと違い、デザインには道具としての何かしらの機能が求められます。ですが、デザインとアートのあいだには、それほど境界線はないとわたしは思っています。
彫刻をつくっていたときもそうだったのですが、アートにはメッセージがあるだけではだめで、自分の頭のなかにあることや、考えていることを整理することがとても重要です。それこそがアートだし、そうしないと何をつくっても結局人には伝わりません。それはデザインも同じだと思います。

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── なるほど。それでは真喜志さんがデザインをするうえで大切にしていることはどのようなことですか?

用途や機能を整理することがとても大切だと思っています。そのうえでデザインしたものが人の生活に溶け込んでいき、その人の生活を整えるための道具になれたらといつも思っています。そしてそれが生活の美しさに結びついていってくれれば嬉しいです。
住空間を自分で整えるということはとても大事なことですよね。物理的な空間を整理することは、自分の頭のなかを整理することと同じだと思います。そのお手伝いをできればと思っています。

── WALL RACKの使い方のアドバイスをお願いします

自分の持ちものを問われる家具ですよね(笑)。必要なものを、必要なだけ持つ生活をしたい方にこそ使ってほしいです。一番上にリュックがのっていて、その中身が気持ちよくラックに並んでいるイメージです。服も、本も、靴も、自分の大事な生活必需品がとりあえずそこにある。そんなふうに使っていただけたら嬉しいですね。

── 真喜志さんが考える暮らしを豊かにしてくれるデザインとはどのようなものですか

生活のよい背景になりえるもの。そして便利な存在。特別なものではないのに、気がつくとずっと使っているもの。そんなものがわたしにとってのちょうどよいデザインです。

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真喜志 奈美

1966年 沖縄県生まれ。デザイナー。武蔵野美術大学工芸工業デザイン科大学院修了後ドイツに渡り、ベルリン国立芸術大学彫刻科大学院修了。1999年 韓国ソウルにてデザイナーとして独立。帰国後2003年にデザイン事務所 LUFTを共同設立。代表作にWALL RACK(2003年)、ENVELOPE(2005年)、LAUAN SHELVES(2010年)他。

2013.12 Journal #01「旅を連想させる家具」

Photography & Text:

加藤 孝司

ジャーナリスト

http://form-design.jugem.jp/

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